[インタビュー]「個別観光は段階的アプローチ可能…何かせねば2017年に戻る」

[インタビュー]「個別観光は段階的アプローチ可能…何かせねば2017年に戻る」

ユン・ゴニョン前大統領府室長 
 
2020年は、南北が行動すべき年 
馬息嶺スキ-場と陽徳温泉の観光は 
北朝鮮にとっても大きな象徴になるだろう 
個別観光は国連制裁と無関係 
世界各国の人々が北朝鮮各地を旅行中 
 
東京五輪を第2の平昌に 
上半期に朝米間で意味ある進展 
7月の東京まで流れを繋げるべき 
「2019年、朝米の時間」うまく行かなかった 
今年は南北が乗り出すべき年
 2018年3月5日、対北朝鮮特別使節団5人が平壌に向かって出発した。特使団にはチョン・ウィヨン大統領府国家安保室長をはじめ、ソ・フン国家情報院長、チョン・ヘソン統一部次官、キム・サンギュン国家情報院2次長など、対北朝鮮・対米業務の主要当局者が勢ぞろいした。唯一例外の人物がユン・ゴニョン大統領府国政状況室長だった。それ以降、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の“腹心”であることを韓国政府が公式に認めるかのように、彼は南北関係の決定的瞬間の度に“主人公”として姿を現した。最近、文在寅大統領は北朝鮮に『個別観光』を提案し、南北関係改善の意志を強調している。21日、4月の総選挙に出馬するため民間人に戻った彼に会って「2020年の南北関係」について尋ねた。

「2020年は、我々が行動しなければならない時間」

 -国政状況室長として南北関係に深く関与した。異例のようにも見えたが、特別な理由があったか。

 「国政状況室は政策の危機管理センタ-だ。政策的事案について事前・事後に報告書を出す。南北関係もモニタリングの対象ではある。しかし、私が南北関係で役割を果たした理由は、国政状況室だからではない。北朝鮮が『金正恩(キム・ジョンウン)と話せる人』として金与正(キム・ヨジョン)を派遣してきたため、我々も『文大統領と話せる人』を送らなければならなかったからだ」

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府で政務企画秘書官を歴任した彼は、文在寅大統領が第19代国会議員だった時代に補佐官を務めた。文大統領が本音を打ち明けられる数少ない側近の一人だ。

 -北朝鮮の金正恩国務委員長に何回会ったか。

 「会った行事は合わせて6回。平壌(ピョンヤン)首脳会談の際は、2泊3日間を通して一緒にいたため、何回会ったか数えるのは難しい(笑い)」

 -金委員長に最も多く会った韓国政府の要人と表現してもいいか?

 「たぶんそうだろう」

 -文在寅政府の重要な南北行事にほとんど関わった。北朝鮮関係者の中にも親しくなった人もいるだろう。

 「金与正北朝鮮労働党第1副部長に会うと嬉しい(笑い)。リ・ソングォン新外務にも数回会った。お酒を酌み交わしたこともある」

 -最近、文在寅大統領が北朝鮮に個別観光を提案した。どういう脈絡から出た提案か。

 「朝鮮半島の非核化は南北・朝米関係によって進む車だ。非核化の主な当事者は朝米だ。彼らが方向を決める前輪に当たる。南北関係は後輪だ。2018年は後輪の力で自動車を動かした。2019年には前輪が自動車を動かせると期待していたが、うまくいかなかった。もう2020年になったし、これからは再び後輪が自動車を動かさなければならない。このため、『個別観光』を提案したのだ。韓国国民の北朝鮮個別観光が実現するためには、南北政府間で多くの合意が必要だ。そうした過程で南北関係が一段階アップグレ-ドされるだろう。南北関係の象徴的な措置として大きな意味がある」

 -北朝鮮と水面下の調整が行われた状態で出た提案か。

 「水面下の話は水面下にととどめておくべきだ(笑い)。水面下の話を公にすれば、もはや水面下の話ではなくなる」

 -実現可能性のある提案なのかが気になる。

 「全面的には難しいだろう。しかし、限られた場所、限られた範囲内での観光は可能だと思っている。馬息嶺(マシクリョン)スキ-場では平昌(ピョンチャン)冬季五輪直前、韓国選手団が行ってトレ-ニングをしたこともある。それが個別観光だ。北朝鮮が熱心に広報している陽徳(ヤンドク)温泉観光地区や馬息嶺スキ-場などに段階的にアプロ-チできると思う」

 -北朝鮮にとっては大した収入にはならないだろうし、煩わしいだけかもしれない。

 「大韓民国の国民が行くということは、北朝鮮にとっても世界的に大きな象徴となる。お金に換算できないほどだ。短期的には分からないが、長期的には人がたくさん行けば、お金にもなるだろう」

 北朝鮮は、国連安全保障理事会をはじめとする国際社会の北朝鮮制裁の対象ではない観光産業を育成することで、経済発展の突破口を開こうとしている。個別観光が北朝鮮のこのような戦略と合致するという意味だ。

 「陽徳、馬息嶺から少し行けば元山葛麻(ウォンサンカルマ)地区や三池淵(サムジヨン)まで観光できる。そうなれば、金剛山(クムガンサン)観光の解決策も出るかもしれない。現代峨山が主体となる観光は制裁のためできない。しかし、個別観光という手続きを踏んで行けば、金剛山にも行ける」

 -これまで北朝鮮からは意味のある反応が出ていないが。

 「北朝鮮が友好的に受け入れるかどうかは重要ではない。それだけ切迫した状況だ。何かしなければならない。そうしなければ、再び2017年に戻ってしまう。2020年は行動すべき年だ。怖がったり恐れる必要はない」

 -金正恩朝鮮労働党委員長が2019年の新年の辞で、「金剛山観光の再開」を提案したが、それから1年が経った。このような状況で昨年10月、金委員長が「金剛山における南側施設の撤去」を指示した。もう少し急ぐべきではなかったのか。

 「その指示には2つの側面がある。現代峨山など、韓国国民の財産権を守らなければならない面がある。ところが、金剛山に行ってみると施設がかなり老朽化していた。ホテルも錆びついており、ゴルフ場には人の背丈より高く雑草が生い茂っていた。撤去せざるを得ない状況という側面もある。『2019年になぜ急がなかったか』という批判は結果的には正しい。私も残念に思う。しかし、当時は朝米関係がうまくいくと期待して待つしかなかった」

「2020年、2月は朝米、7月には東京に繋げなければ」
 個別観光は自動車の後輪のことだ。うまく行っても“後”輪だ。ユン前室長も認めた通り、北朝鮮の核問題は結局“前輪”が解決しなければならない。後輪がいくら頑張っても前輪が空転しては意味がない。ユン前室長は「個別観光そのものが重要ではなく、朝米関係がうまくいくかどうかが重要」だとしたうえで、「上半期中に朝米間に意味ある進展があるだろう」と述べた。

 -確実な根拠のある話なのか。

 「客観的な状況を見てもそうだ。2月初めにトランプ米大統領の一般教書演説がある。弾劾局面が終わるという意味だ。北朝鮮も全員委員会で『力を誇示する』としたが、そのきっかけになるのは2月8日の人民軍創建記念日程度だ。朝米共に2月初めに分岐点が生じる。このような点に照らしてみると、2月初め、遅くとも3月には朝米の間で何かが進まざるを得ない。このような流れを7月の東京五輪までつなげていかなければならない。東京を第2の平昌にすべきだ」

 -2017年5月、文在寅大統領就任直後、状況は戦争危機説が流れるほど厳しかった。このような状況を突破して、2018年には南北関係がうまくいったが、“神の一手”に挙げられる場面があるとしたら。

 「長い期間の中で見れば、2017年6月に新政府の朝鮮半島平和構想を発表したベルリン宣言であり、短い期間の中で見れば、平昌冬季五輪が終わるまで韓米合同軍事演習を延期することにしたことと、平昌に南北が一緒に行こうと提案したことだ」

 -合同軍事演習の延期が大きなきっかけになったなら、3月に予定された合同演習も延期できるだろうか。

 「合同演習は韓米同盟に関連するもので主権事項だ。2018年3月、特使として北朝鮮に行った際、金正恩委員長が『合同演習のことは理解する』と述べた。正常な国家なら、互いに軍事演習は理解するものだ。ただし、交渉中は困るのではなかろうか。対話が進められている場合は、韓米合同演習に対して弾力的に検討する必要がある。3月の合同演習も同じだ」

 最近、ハリ-・ハリス駐韓米国大使が『個別観光』など韓国政府の南北関係構想について「米国との作業部会を通じて協議した方がいいだろう」と発言し、大統領府は「非常に不適切だ」と反発した。米国務省はハリス大使を擁護した。

 -ハリス大使の発言をどう考えるか。

 「対北朝鮮個別観光は国連の対北制裁とは関係ない。全世界の多くの人々が、北朝鮮の各地を旅行している。そのような事実を知りながら、制裁云々しながら韓米作業部会の許諾がなければならないかのように糊塗する意図が疑わしい」

「リ・ソングォン外務相の任命、悪くない」

 北朝鮮は最近、外交を総括する外務相を“米国通”のリ・ヨンホから“対南ライン”のリ・ソングォン祖国平和統一委員会(祖平統)委員長に替えた。外交の両軸である労働党国際部長と外務相を電撃的に交替し、対南業務を総括してきた人物を異例にも外交の長に据えた破格の人事だ。ユン前室長は「金正恩委員長が何か変化を試みようとしているということで、悪くないと思う」と述べた。

 - リ・ソングォンはどんな人物か。

 「軍人出身でキム・ヨンチョル派だ。『冷麺発言』(2018年9月の南北首脳会談当時、平壌を訪れた企業関係者らに「冷麺がのどに通るのか」と暴言を吐いたとして物議を醸した)で見られるように、気性が荒い。体制への忠誠心が強い。リ・ソングォンに替えたのは、形勢を変えようという金委員長の意志だと思う。リ・ヨンホでうまく行ったなら、替える理由がない。変化の方向についてはもう少し分析が必要だ」

 -対南ラインであるリ・ソングォンを外務相に任命したのは、南北関係を無視し続けるわけにはいかないという判断の結果と見ていいか。

 「肯定的に見れば平昌冬季五輪当時からのヒストリ-(過程)をよく知る人物だ。南北関係に詳しい。そして、金正恩に近い“キム・ヨンチョル・ライン”だ。その点から、悪くないと思う」

 -文在寅大統領と金正恩委員長は相変らず互いを信頼しているか。

 「1年間で3回も通訳も交えず首脳会談を行った間柄だ。平壌では2泊3日を共に過ごした。首脳間の信頼は依然として厚い。2018年平壌首脳会談当時、文大統領に随行して訪朝する予定だったが、会談の準備状況に支障が生じ、車で一日先に平壌に行ったことがある。その夜12時頃、金正恩委員長が事前に連絡もなく、百花園招待所に現れた。私を訪ねて、2泊3日間の平壌首脳会談の具体的な事項について詳しく説明してくれた。文大統領への配慮だと感じた」

 -陸路でソウルから平壌まで行くのは珍しい経験だが、道路事情はどうだったか。

 「板門店(パンムンジョム)で北朝鮮が提供した車に乗り換えて平壌に向かった。北朝鮮の現地事情をこの目に焼き付けようと思って頑張ったが、前日の睡眠不足で、5分ほどで眠りに落ちてしまった。道路事情はよくなかった。車が揺れ続けた。居眠りしながらも、車の天井に頭をぶつけた(笑い)」

 -首脳間の電話会談は、相互信頼を示す象徴的な場面だ。2018年4月の第1回南北首脳会談を控えて初めて南北首脳間のホットラインが設置されたが、実際使ったことはあるか。

 「ホットラインについては南北の間で文化の違いがある。韓国では、大統領が誰と何分間、何の話をしたのかすべて公開される。北朝鮮では、最高尊厳の電話は誰も知ることもできず、知る必要もない事案だ。北朝鮮からすると、我々が広報しすぎていると誤解される状況になってしまった」

 -首脳間の電話会談が行われなかったとしても、ホットライン自体はまだ稼働しているか。

 「それについては先ほどの発言で答えたことにしてほしい」

 彼はインタビュ-の間、「2020年は南北関係が打って出なければならない時期」だと再三強調した。

 「昨年、スティ-ブン・ビ-ガン米国務省北朝鮮政策特別代表が訪韓した際、『朝米関係が右足、南北関係が左足だ。片足で走っては遠くには行けない。(南北が先に進もうとしていると)疑わず、信じてほしい』と説得した。2019年6月30日に南北米の首脳が板門店で会ったが、その後はうまく行くかどうか分からない状態だった。進展が見られることを期待するしかなかった。下手に動き出すのは難しかった。今は車両が溝に落ちた状態だ。そこから抜け出すためには、後輪が自動車を動かさなければならない時だ」

キム・ウォンチョル、ノ・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

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