【コラム】言葉だけは早い政府

【コラム】言葉だけは早い政府

 数日前、大邱で飲食店のオーナーが、新型コロナウイルス問題で深刻になった生活苦を悲観し焼身自殺を図った。滞っている従業員らの月給670万ウォン(約58万円)や家賃、公共料金を支払えず、命を捨てようと考えたのだという。心配していたことが起きた。新型コロナウイルスの感染拡大によって経済活動が全面的にストップし、生計を脅かされるほどの資金難が押し寄せたが、支援すると言っていた政府は隣にいなかった。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は新型コロナウイルスの感染拡大の状況を「非常経済時局」と規定し「経済の萎縮によって直接打撃を受けている小商工人(零細事業者)や自営業者が倒れないよう支柱の役割を果たすことにも力を注ぐべき」(3月17日、閣議)と述べていた。

 最低賃金引き上げと週52時間勤務制によって最も大きな打撃を受けた自営業者たちは、今度は政府のずさんなコロナ対策のせいで苦しめられている。緊急資金1000万ウォン(約87万円)を支給するという政府の言葉だけを信じ、小商工人市場振興公団を訪れた自営業者たちは、ほとんどが肩透かしを食らった。生きていくための金を借りに行ったのに、マスク騒動のときのように長い行列に並んだだけだったのだ。貸出確認書の担当職員が約300人しかいない公団に、数百万人に上る自営業者を担当させること自体がナンセンスだった。 今回政府は太っ腹な政策を声高に発表している。企業の支援金をわずか5日で50兆ウォン(約4兆3700億円)から100兆ウォン(約8兆7300億円)へと2倍に増やしたと思ったら、その6日後には中産層にまで100万ウォン(約8万7300円)を支給するという9兆ウォン(約7900億円)台の「緊急災難支援金」プロジェクトを発表した。しかし、月給がいくらなら100万ウォンもらえるのかさえも明確にせずバタバタしている。発表の翌日には京畿道から地方自治体の負担金20万ウォン(約1万7500円)を払わないと反発の声が上がった。支援金の支給基準も定めず、地方自治体との協議も行わないままやみくもに100万ウォンの支給を発表したわけだ。通常なら月給や家族の人数、自治体ごとの支援金額を簡潔に表にしてA4用紙にまとめ、詳しく説明するはずだが、今回は答えも明確に出さないまままごついている。準備もせずに声高に発表しているのを見ると、15日後の総選挙を狙った無差別空砲弾を撃ちまくっているとしか思えない。

 過去の政府をまねて大統領主宰の非常経済会議を開催し、非常対策というものを打ち出しているが、反応も芳しくなく政策が受け入れられていない。最初の会議の際に発表した証券市場安定基金が代表的だ。この日、証券街では政府の発表と同時に大規模資金が株式市場に投入されるものと期待していた。ところが実際にふたを開けてみると「(基金の)具体的な計画はまだ立てておらず、速やかに準備する」(洪楠基〈ホン・ナムギ〉経済副首相)という期待はずれな言葉が出てきただけだった。失望した投資家たちはパニックに陥り、株価は世界金融危機以来の最低水準まで急落した。

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